
芸術の使徒(二十三歳、十二月のノートから)
俺はもう、あこがれない、なににも。
偉大な作品のみが俺をつくる。そして俺は無心に、かつ乱心に日常生活をなめつくす。
力が飽和すれば創作したらいい。なにかの力が。
一生涯を生きる者としては、決して自己を限定しない。ただ永遠の芸術の永遠の使途となるべく努力する。俺は単なる『芸術活動をすべき人間』として走る。それが『俺』だ。俺の正体だ。
彼らは俺を捨てはしない。だから俺も彼らを捨てない。トルストイや太宰やルソーがアホらしくなるときがくるというのか。
俺は聖人ではなく、聖人でもある。俺はすべての人間であって、ひとりぼっちの俺だ。
偉大な芸術品のみが俺を真の純粋な俺に対峙させる。おれはそのとき厳格かつ謙虚だ。
日常生活での俺は、弱い俺になりきる。弱さを背負う強い力がいるのだ。限定せず生活するために、芸術に命を捧げる覚悟がいる。
どういう覚悟か。芸術活動さえ犠牲にするほどの意志をもつことだ。なぜなら、それも源泉になるから。

