
恋を知らないもの
(二十二歳 秋頃)
ひとこいしい。ひとが恋しい。孤独はもういやだ。孤高?バカぬかせ。そんなもん偽りじゃないか。
すべてを超えた所──善も悪も美も真も、まったく無力になってしまう所。 現実の波間。
愛し、ひとの愛を引き出す。離れがたくなる。なぜ?
ひとは孤独を脱したいのだ。死んでゆく寂しさを消してしまいたい。それでひととひととが結びつく。(生きることは悪だ。)
ひとは死にたくないのか。ぜったいに死にたくはないのか?何かを満たせば死んでも良いんじゃないか。
ひとは弱い。それを自覚し、苦しむ。だが、ぜったいに強くはなれない。
「孤独を脱出する」いかにして?無償の愛によって?
笑顔。
ひとり者らの集いがあっても今は不思議じゃない。
なぜ君はひとりになったのかと質問されるんだ。
なぜ君と僕らは似ているのか
「似てはいない
ひとり者はひとり者です 自由に金縛りにあう道を選ぶのです」
君は放り出され、ひとり街へ出る
苦しみは、あやまちの証しなのか?
苦しむ天職なんてないのか?
不安なんだ。

恋を知らない者
いまだに恋を知らない
ここでは恋は知られない
先決としてまずこの
ぼんやりまなこを
矯正する問題だ
いちど幕にしてから
もいちど吐いて吸ってから
呼んでみよう
恋を知らない者の恋
娘のように座っている
あのクリーンルームの人
こくりこくりうつむいている
あの小さな可愛らしさ
何人も 何人も
何百人も一瞥したが
それしか見えぬ
二度は呼べないもの
恋は知らない者の恋


